プロ弁護士の思考術 その2
今回も『プロ弁護士の思考術(矢部正秋著)』について。
第2章 オプションを発想する についてです。
①.内容を簡単に
物事を解決するのに正解が一つしかない、ということはありえない。
解決策はたくさんあるし、教科書通りの正解だけが存在するなんてことはない。
深く物事を考えるために、解決策をたくさん考える=オプションを発想することが大事。
二分法(イエスかノーかなど)で考えてはいけない。
②.面白いと思った事例(本書P61~63)
ある食品メーカーが、長年(20年以上)取引をしている配送業者との契約を終了するため、顧問弁護士に相談した。
その顧問弁護士は「2年ごとの自動更新で20年以上続いているので、業者が過去に投下した資金などの補てんとして5億円程度の損害賠償を支払わないとならない」と回答。
※ブログ中の人の補足
継続的に続いている契約を解除するためには、契約条項に従い契約を解除することができるが、信義則(信義誠実の原則)に反する場合は制限される。顧問弁護士は、契約の解除について信義則に反するので、食品メーカーに損害賠償をする義務があると考えた。
食品メーカーは、この見解に納得いかなかったので、この本の著者(矢部正秋弁護士)にセカンドオピニオンを求めた。
著者は、法律解釈と現実の紛争処理は別物なので、どのように解決するべきかを考えた。契約を解除しても裁判にならない方法もあるので、そちらも考えるべきだと。
食品メーカーが契約を解消したいといえば、配送業者が蔵出しをストップするという捨て身の攻撃をしてくることもあり得る、と著者は考えていたため、どこを落としどころにするか?を考えていた。
複数の提案を用意して、2か月半の厳しい交渉の末、「2年間は契約を続けるが、2年目は年間最低委託量の定めはなし」というところで結着した。
相手の出方も考えたうえで、複数のオプションを用意して交渉に臨んだ結果、食品メーカにとって有利な条件を引き出すことができた。
顧問弁護士の言っていた5億の損害賠償とはなんだったのか?
世の中は教科書通りの正解で回っているわけではない。
③.ここから得たこと。
物事の解決策は教科書通りの正解があるわけではない。
判例や学説など教科書通りの正解はあるが、それ通りに事件を解決しなくてもよい。
「どうすることが最適なのか?」にたどり着くために、オプションをたくさん持っておこう。